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ヴォクソール 女性の花売りの人形 (1755-60年頃)
A Vauxhall Figure of Female Flower Seller C.1755-60



 

 ヴォクソール(Vauxhall)の女性の花売りのフィギュア。体を横に傾け、右手で花かごを抱え、振り上げた左手には一束の花を持っている。本来は同じモチーフの男性像(体を反対側に傾けている)とペアをなしている。かつてロントンホール(Longton Hall)作品とみなされていたフィギュアの多くは、現在はヴォクソール作品の可能性が高いと考えられるようになってきているが(コラム14. ロンドン磁器窯の攻防を参照。)、本品もその一つである。(なお、本品は、本サイトにおいてもロントンホール作品として紹介してきたが、今回ヴォクソール作品として掲載しなおしたものである。)

 ヴォクソール磁器についての研究は日が浅く、特にフィギュアに関しては、系統だった研究が発表されたのは、2014年のECC年報に掲載されたRoger Masseyの論文(下記参照文献の欄に記載。)が初めてである。ロントンホールからの判定替えの根拠としては、ヴォクソールではソープロックを使用した軟質磁器が製造されたこと(ロントンホールではソープロックは使用されていない)や、プリマスの硬質磁器フィギュアと共通するモデルがいくつもあること(ヴォクソール経営者のニコラス・クリスプとプリマス経営者のウィリアム・クックワジーとが経営上の関係を有していたことは知られている。ヴォクソール(V2)を参照。)などが挙げられている。しかし、全てのフィギュアで確信的な論証がなされたわけではなく、いまだ研究途上にある。

 Roger Masseyの上記論文では、本品はヴォクソール窯の活動時期のうち中期(1755-60年頃)の作品だと分類されている。この時期のフィギュアの特徴としては、ソープロック使用によるなめらかな(waxy)素地、土台部分のロココ調のスクロール模様、ピンクや黄色などのパステル調の薄い色合いなどがあげられているが、こうした特徴は、本品にもほぼ当てはまると思われる。

 裏面は、基本的には平らだが、中央の穴の周辺は指で素地を詰め込んだと思われるラフな仕上がりになっている。
高さ: 約12cm
Height:
12cm (4 3/4 in)
マーク: なし
Mark: None
参照文献/References
-Brian Adams "True Porcelain Pioneers The Cookworthy Chimera 1670-1782" (2016) Vauxhall section (pp.158-167)
-Roger Massey "Vauxhall Porcelain Figiures" English Ceramic Circle (ECC) Transactions Volume 25 (2014) Apendix B.20
-ECC Exhibition Catalogue"Ceramics of Vauxhall 18th Century Pottery and Porcelain" (2007) Porcelain Figures section (pp.91-94) by Roger Massey
-Simon Spero "Vauxhall Porcelain - A Tentative Chronology" ECC Transactions Volume 18 Part 2 (2003)

(As Longton Hall)
-Bernard Watney "Longton Hall Porcelain" Plate 37A and 37B
-Peter Bradshaw "18th Century English Porcelain Figures 1745-1795" p233 and p309 (O54)

-Arthur Lane "English Porcelain Figures of the 18th Century" p117
(2009年7月掲載。2020年9月再掲載)